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公務員が退職前に確認すべき iDeCo・NISAの出口戦略 ~賢い受け取り方と注意点~

Tags: 公務員, 退職金, iDeCo, NISA, 出口戦略, 税金

はじめに:退職が視野に入ったら考えたい、iDeCo・NISAの「出口戦略」

公務員として長年勤められ、いよいよ退職が視野に入ってこられた方も多いかと思います。退職金の使い道や、退職後の生活資金について考える大切な時期です。

この時期にぜひ検討していただきたいのが、これまで積み立ててこられたiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)といった資産の「出口戦略」、つまり、どのように受け取るか、どのように活用していくかという計画です。

公務員の場合、多くの方が退職時期を比較的明確に把握できるため、iDeCoやNISAの受け取りについても計画的に準備を進めやすいという利点があります。これらの制度は、積み立てる時だけでなく、受け取る時にも税金に関わる選択肢がいくつか存在します。賢く受け取ることで、手元に残る資金を最大限に活かすことにつながります。

この記事では、退職を控えた公務員の皆様に向けて、iDeCoとNISAの受け取り方やそれに伴う税金、手続き上の注意点について、分かりやすく解説します。

iDeCoの賢い受け取り方と税金

iDeCoは、原則として60歳以降に受け取りが可能になります。受け取り方法は主に3種類あり、それぞれ税金の取り扱いが異なります。

受け取り方法の種類:一時金、年金、または併用

  1. 一時金として受け取る: 積み立てた資産を一度に全額まとめて受け取る方法です。この場合、「退職所得」として課税されます。長年勤められた公務員の退職金も同じく退職所得となるため、後述するように退職所得控除額に影響がある点を考慮する必要があります。
  2. 年金として受け取る: 積み立てた資産を、分割して定期的に受け取る方法です。例えば、5年、10年、または終身といった形で受け取る期間を選択できる場合があります。この場合、「公的年金等の雑所得」として課税されます。公的年金(共済年金等)と合算されて税額が計算されます。
  3. 一時金と年金を併用して受け取る: 積み立てた資産の一部を一時金として受け取り、残りを年金として受け取る方法です。

どの方法が有利かは、積み立てた金額、受け取る期間、他の退職金や公的年金の金額、その時点の他の所得など、個々の状況によって異なります。

一時金で受け取る場合の税金:退職所得控除の活用

iDeCoを一時金で受け取る場合、他の退職金と同様に退職所得として扱われます。退職所得には大きな「退職所得控除」という非課税枠があり、勤続年数(iDeCoの場合は加入期間)が長いほど控除額が大きくなります。

課税される退職所得額は、(一時金等の収入金額 - 退職所得控除額)÷ 2 で計算されます。税負担を大きく軽減できる仕組みです。

公務員の退職金との関係に注意: 公務員として受け取る退職金とiDeCoの一時金を、同じ年に受け取る場合、退職所得控除は両方の合計額に対して計算されます。公務員の退職金だけで退職所得控除の枠を使い切ってしまう(またはそれに近い額になる)場合、iDeCoの一時金にはあまり控除が適用されず、税負担が大きくなる可能性があります。受け取り時期をずらすなどの検討が必要になる場合があります。

年金で受け取る場合の税金:公的年金等控除との関係

iDeCoを年金形式で受け取る場合、公的年金(共済年金、老齢基礎年金など)と合わせて「公的年金等の雑所得」として課税されます。公的年金等にも「公的年金等控除」という非課税枠がありますが、退職所得控除ほど大きくはありません。

受け取る年金額が増えるほど税負担も増えることになります。他の公的年金との合計額で税金が決まるため、自身の年金見込額を把握しておくことが重要です。

公務員の退職金とiDeCo一時金の受け取り時期の注意点

先述の通り、公務員の退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取ると、退職所得控除を両方で分け合うことになり、税負担が増える可能性があります。これを避けるために、受け取り時期をずらすことが有効な戦略となり得ます。

例えば、退職金を受け取った年の翌年以降にiDeCoの一時金を受け取ることで、それぞれに対して独立した退職所得控除を適用できる場合があります。(ただし、特定の期間内に受け取る必要があるなど、詳細な税法上の規定がありますので、ご自身の状況に合わせて税理士等の専門家にご確認ください。)

NISAの出口戦略:非課税期間終了後の選択肢

NISAは、iDeCoのように特定の年齢にならないと受け取れないという制限はありません。いつでも売却して現金化できます。しかし、非課税で保有できる期間には上限があります(一般NISAは5年、つみたてNISAは20年)。非課税期間が終了する前に、今後の対応を検討する必要があります。

非課税期間終了後の選択肢をおさらい(旧制度)

※2024年以降の新しいNISA制度で投資した分については、非課税保有期間が無期限となります。したがって、非課税期間終了後の対応を考える必要はありません。売却したいタイミングで売却して現金化できます。

売却するタイミングの考え方

NISA口座で運用してきた資産をいつ売却するかは、ご自身の資金計画や市場の状況によって判断が異なります。

市場価格は常に変動しますので、売却するタイミングによっては運用成績が悪化する可能性もあります。必要な資金が必要になる時期から逆算して、慌てて売却しなくて済むような計画を立てることが望ましいでしょう。

NISAで運用していた資産の活用方法

NISAで運用して得られた資金は、特に使い道の制限はありません。退職後の生活費、趣味、旅行、リフォームなど、ご自身のライフプランに合わせて自由に活用できます。

iDeCoとNISA、退職金を組み合わせた出口戦略の視点

iDeCo、NISA、そして公務員の退職金は、退職後の生活を支える大切な資産です。これらを個別に考えるだけでなく、全体を一つの資金として捉え、どのように受け取り、どのように活用していくかという総合的な「出口戦略」を立てることが重要です。

受け取り時期を分散させるメリット

先に述べたiDeCoの一時金と退職金の税金の話のように、受け取り時期を調整することで税負担を軽減できる可能性があります。また、一度に多額の資金を受け取るのではなく、必要な時期に合わせて分散して受け取ることで、計画的な資金管理を行いやすくなるというメリットもあります。

例えば、退職金で当面の生活費を賄い、iDeCoは数年後に一時金として受け取る、NISAで運用中の資産は必要に応じて少しずつ売却していく、といった組み合わせが考えられます。

退職後の資金計画全体で考える重要性

退職後の生活費はどのくらいかかるのか、公的年金はいくらくらい受け取れるのか、といった全体の資金計画を立てた上で、iDeCoやNISA、退職金をどのように組み合わせて活用していくかを考えると、より安心感を持って退職後の生活を迎えることができます。

受け取り手続きにおける注意点と確認事項

iDeCoやNISAの受け取り、あるいはそれに伴う口座の扱いは、それぞれ手続きが必要です。

iDeCoの受け取り手続き

iDeCoを受け取るためには、ご自身が加入していた運営管理機関(証券会社や銀行など)に請求の手続きを行う必要があります。手続きの書類は運営管理機関から送られてきますが、ご自身で請求しないと受け取りは開始されません。

受給開始年齢である60歳に到達しても、すぐに請求する必要はありません。75歳になるまでの間であれば、ご自身の都合の良いタイミングで受け取りを開始できます。手続き方法や必要書類については、加入されている運営管理機関に事前に確認しておくと良いでしょう。

NISA口座の扱い

NISA口座は、投資のための口座であり、資産を受け取るための口座ではありません。NISA口座で保有している資産を現金化するには、売却の注文を出す必要があります。売却代金は、連携している証券会社の口座等に入金されます。

今後、新しいNISA制度で投資を続けたい場合は、そのまま口座を維持します。既に投資を終えて新しい投資の予定がない場合でも、口座をすぐに閉じる必要はありませんが、管理上のことを考えて整理することも可能です。

まとめ:計画的な準備で安心な老後へ

公務員の皆様にとって、退職は人生の大きな節目です。これまで積み立ててこられたiDeCoやNISA、そして退職金をどのように活用していくか、早めに計画を立てることは、退職後の安心につながります。

特にiDeCoの一時金受け取りと退職金の税金については、計画的な受け取り時期の検討が税負担の軽減につながる可能性があります。また、NISAで運用中の資産についても、今後の活用方法や売却時期を考えておくことが大切です。

複雑に感じられるかもしれませんが、まずはご自身のiDeCoやNISAの積立状況、退職金の見込額、そして退職後の資金計画について整理してみることから始めてはいかがでしょうか。必要に応じて、金融機関の窓口や税理士などの専門家に相談することも検討してみてください。

この情報が、皆様の退職後の資産活用と安心な生活の一助となれば幸いです。