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退職金を『守る』から『育てる』へ:公務員が知るべきリスクを抑えた資産活用の考え方

Tags: 退職金, 公務員, 資産運用, 投資初心者, リスク管理

大切な退職金、まずは「守る」から「育てる」という考え方へ

長年の公務員生活、本当にお疲れ様でした。無事に退職金を受け取られた方も、これから受け取る予定の方もいらっしゃることと思います。まとまった金額の退職金を目の前にして、「これをどうすれば良いのだろうか?」と、期待とともに少し不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

大切な退職金ですから、まずは「安全に守りたい」とお考えになるのは自然なことです。しかし、今の低金利時代において、ただ銀行に預けておくだけでは、残念ながらほとんど増えることは期待できません。さらに、物価が上昇する「インフレ」が進むと、同じ金額でも買えるものが減り、実質的にお金の価値が目減りしてしまう可能性もあります。

退職後の人生はまだ長く続きます。これからの生活資金として、また、予期せぬ出費への備えとして、退職金をより有効に活用していく視点も大切です。ここでは、大きなリスクをとって積極的に「増やす」ということではなく、大切な資産を「守りながら、少しだけ育てる」という、無理のない資産活用の考え方についてお伝えしたいと思います。投資経験がほとんどないという公務員の皆さまにも分かりやすくご説明します。

なぜ「守る」だけでは不十分になりうるのか?

まずは、なぜ「ただ守る」だけでは、将来的に不安が残る可能性があるのかを理解しておきましょう。

低金利環境の影響

ご存知の通り、現在の日本では預貯金の金利が非常に低くなっています。定期預金に預けても、増える金額はごくわずかです。例えば、1000万円を0.001%の金利で1年間預けても、利息は税引き前でわずか100円程度です。これでは、せっかくの退職金が実質的に増えることは期待できません。

インフレリスク

インフレとは、モノやサービスの値段が全体的に上がっていく状態のことです。物価が上がると、以前と同じ金額では同じ量のモノやサービスを買えなくなります。つまり、お金の「価値」が下がってしまいます。 例えば、今の100万円で買えるものが、10年後に100万円では買えなくなってしまう可能性があるのです。預貯金で金額が変わらなくても、物価がそれ以上に上がれば、実質的な購買力は低下してしまいます。退職後の長い期間を考えると、このインフレリスクは無視できません。

長い老後生活を見据える必要性

人生100年時代と言われる今、退職後の生活は20年、30年、あるいはそれ以上続く可能性があります。公的年金が主な収入源となりますが、それだけでゆとりある生活を送るには十分ではないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。退職金を単なる貯蓄として寝かせておくだけでなく、少しでも将来に備えて働いてもらう(=育てる)という視点を持つことが、安心して老後を過ごすための選択肢の一つとなり得ます。

「育てる」とは、積極的に「増やす」ことだけではない

では、「育てる」とは具体的にどういうことでしょうか? これは、リスクを積極的に取って短期間で大きな利益を目指す、いわゆる「投資」のイメージとは少し異なります。

私たちの考える「育てる」とは、以下のようなイメージです。

これは、例えるならば、短期で大きく育つ高価な花を育てるのではなく、時間をかけてゆっくりと、しかし確実に根を張り、強くなっていく木を育てるようなイメージです。

公務員の方が「育てる」を始める際の心構えと注意点

では、具体的に「育てる」という考え方を取り入れる際に、どのような点に注意すれば良いでしょうか。特に投資経験があまりない公務員の皆さまに向けて、大切な心構えと注意点をお伝えします。

1. 無理のない範囲で始める

まず最も大切なのは、ご自身の生活資金や近い将来使う予定のある資金には決して手を出さないことです。退職金の中から、当面使う予定のない「余裕資金」の範囲で、「もし減ってしまっても、生活に大きな影響はない」と言える金額を検討しましょう。最初は少額から始めて、慣れていくのが賢明です。

2. 「分散」の考え方を意識する

「分散投資」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、「一つのものだけに集中させず、いくつかの異なるものに分けて資産を持つ」という考え方です。 例えば、全てを一つの会社の株に投資するのではなく、様々な会社の株や債券、国内外の資産など、性質の異なるものに分けて持つことで、どれか一つの価値が大きく下がっても、資産全体への影響を抑えることができます。 これは、「育てる」場合でも非常に重要な考え方です。預貯金だけでなく、後述するような比較的リスクの低い金融商品など、いくつかの方法に分散させることを検討しましょう。

3. 「長期」で考える

資産を「育てる」ことは、短期間で結果を出すものではありません。時には価値が下がってしまう時期もあるかもしれませんが、焦らず、長い目で見て資産全体が緩やかに成長していくことを目指します。短期的な値動きに一喜一憂せず、一度決めた方針に基づいて、じっくりと時間をかけることが大切です。

4. 分からないことはそのままにしない

資産活用に関する情報は多岐にわたります。iDeCoやNISAといった制度、様々な金融商品など、初めて聞く言葉や仕組みも多いかもしれません。複雑だと感じたり、理解できない部分があったりしたら、そのままにせず、しっかりと調べるか、信頼できる窓口に相談することが重要です。

5. 詐欺や悪質商法に十分注意する

退職金を受け取った高齢者を狙った詐欺や悪質商法は後を絶ちません。「必ず儲かる」「元本保証で高利回り」といったうまい話には絶対に耳を傾けないでください。大切な資産を守るためにも、不審な電話や訪問には応じず、家族や信頼できる人に相談したり、消費生活センターなどの公的機関に問い合わせたりするようにしましょう。

「育てる」ための選択肢(具体的な商品推奨ではありません)

リスクを抑えながら「育てる」ための具体的な選択肢としては、以下のようなものが考えられます。(特定の金融商品を推奨するものではありません。あくまで一般的な選択肢のご紹介です。)

これらの選択肢を検討するにあたっては、それぞれの特徴やリスクをしっかりと理解することが不可欠です。分からない場合は、金融機関の窓口や専門家に相談してみるのも良いでしょう。

まとめ:焦らず、学びながら「育てる」第一歩を踏み出そう

大切な退職金を「守る」だけでなく、低金利やインフレに対応しつつ、リスクを抑えながら「育てる」という視点を持つことは、これからの長い退職後生活をより安心して過ごすための有力な選択肢の一つです。

「投資」という言葉に難しさや不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、まずは無理のない範囲で、「育てる」という考え方を取り入れてみることが大切です。焦る必要はありません。ご自身のペースで、まずは資産活用の基本的な知識を学び、ご自身の状況に合わせてどのような方法が考えられるのかを検討することから始めてみましょう。

このサイトでは、公務員の皆さまの退職金活用に役立つ情報を引き続き提供してまいります。ご自身の資産について考えるきっかけとなれば幸いです。

(注) 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品やサービスを推奨するものではありません。投資にはリスクが伴います。最終的な投資判断は、ご自身の判断と責任において行ってください。最新の情報やご自身の状況に合ったアドバイスについては、金融機関や専門家にご確認ください。