公務員の退職金活用:趣味、旅行、学び直し…セカンドライフを彩る資金の考え方
長年のご公務、誠にお疲れ様でした。退職金を受け取られ、ほっとされるとともに、今後の生活やお金の使い方について、様々な思いを巡らせていることと存じます。特に、これまで仕事に忙しく、なかなか時間を取れなかった趣味や旅行、あるいは新しい学びなど、セカンドライフをより豊かにするための計画を温めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
退職金は、長年の勤労に対する大切な財産です。このまとまった資金を、退職後の「やりたいこと」の実現に賢く活用するためには、どのような考え方で資金計画を立てれば良いのでしょうか。本記事では、公務員の方々が、退職金を使ってセカンドライフを彩るための資金の考え方について、分かりやすく解説します。
セカンドライフを彩る、退職金で叶える「やりたいこと」とは
退職後の時間は、ご自身の興味や関心に改めて向き合える貴重な機会です。セカンドライフを充実させる「やりたいこと」として、例えば以下のようなことが挙げられます。
- 趣味の深化・拡大: これまで時間をかけられなかった趣味に没頭する、新しい趣味に挑戦するなど。道具の購入、スクールへの参加、関連旅行など、ある程度の資金が必要になる場合があります。
- 国内・海外旅行: 時間的な余裕ができたからこそ、長期の旅行や、これまで行きたかった場所への旅を計画する方も多いでしょう。
- 学び直し・自己投資: 語学、資格取得、大学や専門学校での学び直しなど、新しい知識やスキルを身につけることへの投資です。
- 社会貢献・地域活動: ボランティア活動やNPOへの参加、地域のお祭りや行事への積極的な関与など、社会とのつながりを深める活動。活動によっては交通費や資料費などが必要になります。
- 家族への貢献・思い出づくり: これまで支えてくれた家族への感謝として、旅行やプレゼントを計画したり、孫の教育資金の一部を援助したりすることなども考えられます。
これらは、退職金があるからこそ、より具体的に計画しやすくなる「人生を豊かにする選択肢」と言えるでしょう。
退職金で「やりたいこと」を叶えるための資金計画の第一歩
退職金というまとまった資金を、安心して「やりたいこと」に使うためには、やみくもに使い始めるのではなく、まずは全体の資金計画を立てることが重要です。
1. 全体の資金像を把握する
まずは、退職後のご自身の資金全体像を正確に把握しましょう。
- 退職金の総額: すでに受け取られた、または受け取る予定の退職金(一時金)の金額です。
- 公的年金の見込み額: 将来受け取る公的年金(公務員の場合、多くは厚生年金)の受給開始時期と年額を確認します。ねんきん定期便や共済組合からの通知などで確認できます。
- その他の収入源: 再任用による給与、個人年金、家賃収入、不動産収入など、退職後も継続的に得られる可能性のある収入源を確認します。
- 現在の貯蓄・資産: 退職金とは別に、現時点で保有している預貯金、株式、投資信託、不動産などの資産を確認します。
これらの情報を整理することで、退職後のご自身の経済状況を客観的に把握する出発点となります。
2. 最優先すべき「守りの資金」を確保する
次に、把握した全体の資金の中から、退職後の生活を安心して送るために「優先的に確保しておくべき資金(守りの資金)」を明確にしましょう。
- 当面の生活費: 年金受給開始までの生活費や、年金だけでは不足する可能性がある分の生活費として、当面の生活費を十分に確保しておきましょう。目安として、最低でも1~2年分の生活費をすぐに引き出せる預貯金として準備しておくことが推奨されることが多いです。
- 医療・介護予備費: 人生の後半には、医療費や介護費用が必要になる可能性が高まります。具体的な金額を見積もるのは難しいですが、ある程度のまとまった予備費を確保しておくことで、将来への安心感が大きく高まります。
- 不測の事態への備え: 自宅のリフォーム、車の買い替え、家電の故障、冠婚葬祭など、予期せぬ大きな出費に備えるための予備費も必要です。
これらの「守りの資金」は、将来の不安を軽減し、日々の生活に安心感をもたらすために非常に重要です。まずはこれらの資金をしっかりと確保することを最優先に考えましょう。
「やりたいこと」のための「攻めの資金」を予算化する
「守りの資金」を十分に確保できた上で、残りの資金の中から「セカンドライフを彩るための資金(攻めの資金)」をどのくらい捻出し、どのように使うかを具体的に計画します。
1. 使える上限額を考える
確保した「守りの資金」と、今後受け取る年金やその他の収入、そして将来的に運用に回す資金などを考慮した上で、「趣味や旅行などに使える資金はどのくらいか」という上限額を考えます。これは、退職金総額から「守りの資金」や「運用に回す資金」などを差し引いた残りの一部、という考え方になります。
2. 具体的な「やりたいこと」と予算を紐付ける
上限額が見えてきたら、具体的にやりたいこと(旅行、趣味、学びなど)に必要な費用を見積もり、予算を立てていきます。
- 「〇年以内に、夫婦で海外旅行に△回行きたい。1回の旅行に□円程度かかる見込み」
- 「△△の資格取得のために、□□のスクールに通いたい。受講費用は〇円」
- 「新しい趣味の道具を揃えるのに〇円、毎月の活動費に△円」
のように、できるだけ具体的に書き出してみましょう。
3. 他の収入とのバランスを考える
退職後の資金は、退職金だけではありません。公的年金、再任用などによる収入、iDeCoやNISAからの受取金なども、セカンドライフの資金源となります。計画している「やりたいこと」の費用を、退職金の一部から捻出するのか、あるいは毎月の収入や運用益から賄っていくのかなど、他の資金源とのバランスを考慮しながら予算を検討することが大切です。
例えば、比較的大きな出費(旅行、高額な習い事など)は退職金の一部から、毎月の継続的な費用(趣味の会費など)は月々の収入や運用益から、といったように使い分けを考えることも有効です。
資金計画を実行・見直しする上での注意点
退職金を使ったセカンドライフの資金計画は、一度立てたら終わりではありません。以下の点にも留意しながら進めましょう。
- 家族との話し合い: ご夫婦やご家族と、退職金の使い道や今後の資金計画について十分に話し合い、共通認識を持つことが円満なセカンドライフのためにも重要です。
- 計画の見直し: 人生の状況は変化します。体調やライフスタイル、経済状況に応じて、立てた計画を定期的に見直す柔軟性を持つことが大切です。
- 無理のない範囲で: 計画通りに進まなくても焦る必要はありません。ご自身のペースで、無理のない範囲で計画を実行・修正していくことが、長く楽しむ秘訣です。
- 専門家への相談も視野に: より詳細な資金計画や、年金、税金などについて不安がある場合は、ファイナンシャルプランナーや金融機関の専門窓口、あるいは公的な相談窓口などに相談することも検討してみましょう。
- 詐欺への注意: 退職金を受け取った方を狙った詐欺や悪質商法も存在します。「絶対儲かる」「元本保証」といった甘い話にはくれぐれも注意し、すぐに判断せず、必ず家族や信頼できる第三者に相談するようにしてください。
まとめ
公務員の退職金は、長年の努力が実を結んだ大切な資産です。この資金を、「守り」にしっかりと使いつつ、セカンドライフをより豊かにするための「やりたいこと」に計画的に「攻め」の姿勢で活用することは、人生後半の満足度を高めることにつながります。
まずはご自身の資金全体像を把握し、「守りの資金」を確保した上で、無理のない範囲で「やりたいこと」のための予算を立ててみましょう。この記事が、退職金を使った安心で充実したセカンドライフの実現に向けた、賢い資金計画の第一歩となることを願っております。