公務員が退職金を受け取ったら最初にやるべきことリスト:手続き、確認、そして『考える時間』の重要性
公務員が退職金を受け取ったら最初にやるべきことリスト:手続き、確認、そして『考える時間』の重要性
長年の公務員生活を終え、退職金を受け取られた皆様、本当にお疲れ様でした。人生の大きな節目を迎え、これから始まる新しい生活に期待を膨らませる一方で、「受け取った退職金をどうすれば良いのだろうか」と、戸惑いや不安を感じていらっしゃる方も少なくないかもしれません。
特に、これまで投資経験がほとんどなく、インターネットでの複雑な手続きに不慣れな方にとっては、大きなお金を前にして「騙されたらどうしよう」「損をしてしまうのではないか」といった心配が先に立つこともあるかと思います。
この記事では、公務員の皆様が退職金を受け取った直後に、まず何をすべきか、どんなことを確認し、そして次のステップに向けてどのように考えを整理していけば良いのかを、分かりやすい「やることリスト」形式で解説します。焦らず、冷静に、そして賢く退職金を活用するための第一歩を、ここから踏み出しましょう。
退職金受け取り直後の確認事項
退職金が指定の口座に振り込まれたら、まずは以下の点を確認しましょう。これは、今後の計画を立てる上で非常に重要な最初のステップです。
- 受け取った金額の確認:
- 支給された退職金が、事前に通知されていた金額と一致しているかを確認してください。
- 退職時には「退職所得の源泉徴収票」が交付されます。ここに記載されている金額と、実際に振り込まれた金額、そして源泉徴収された税額を確認しましょう。
- 退職所得控除と税金の確認:
- 公務員の退職金には、「退職所得控除」という大きな非課税枠が設けられています。これにより、多くの場合は税金がほとんどかからないか、かかってもごくわずかになります。
- 源泉徴収票で、この退職所得控除が正しく適用されているかを確認できます。ご自身の勤続年数に応じた控除額については、人事院のホームページなどで確認することが可能です。
- 今後の収入源の確認:
- 退職後の主な収入源は、公的年金(共済年金から移行された国民年金・厚生年金)となる方が多いでしょう。退職金の確認と並行して、今後受け取る年金額についても、「ねんきん定期便」や年金事務所からの通知などで確認しておきましょう。
- 再任用などで働き続ける場合は、その給与収入も今後の資金計画に含めて考えます。
- 退職金は、今後の生活費を賄うための重要な資金の一部となりますが、全てではありません。年金などの定期収入と退職金を合わせた全体像を把握することが大切です。
退職金受け取り後の手続き
退職金の受け取りそのものに関して、受け取り後に特別な手続きが必要なケースは多くありません。しかし、いくつか知っておくべきことがあります。
- 確定申告の必要性(多くは不要):
- 通常、公務員の退職金は、支払いを受ける際に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、退職時に税金が正しく計算され、源泉徴収で課税が完了します(これを「分離課税」といいます)。この場合、改めて確定申告をする必要はありません。
- ただし、複数の勤務先から退職金を受け取った場合など、例外的に確定申告が必要になるケースもあります。ご自身の状況が該当するか不明な場合は、税務署や税理士などの専門家にご確認ください。
- iDeCoやNISAの手続き(該当者のみ):
- 現役時代にiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入していた方は、退職により国民年金の被保険者区分が変わります(多くの場合、第2号被保険者から第1号または第3号被保険者へ)。これに伴い、iDeCoの加入者区分変更手続きが必要になります。この手続きを忘れると、掛金の拠出ができなくなったり、運用指図者になったりします。
- NISA(少額投資非課税制度)やつみたてNISAを利用していた方も、退職後の収入や資産状況、今後のライフプランに合わせて、運用方針や積立額の見直しを検討する良い機会です。これらの手続きや検討については、別の記事で詳しく解説していますので、そちらもご参照ください。
- 退職に伴うその他の手続き(健康保険、年金など):
- 退職金そのものの手続きではありませんが、退職後は健康保険の切り替えや、国民年金の手続き(配偶者が扶養に入っていた場合など)が必要になります。これらの手続きも忘れずに行いましょう。
なぜ『すぐに使わない』が重要か:考える時間を持つ意味
退職金というまとまったお金を手にすると、「早く何か良いものに使わなくては」「増やさなくては」と焦りを感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ここで最も重要なのは「すぐに大きな決断をしない」ことです。
退職金は、これからの長い人生を支える大切な資金です。使い道や運用方法を焦って決めると、後悔する結果につながる可能性があります。
- 衝動的な判断のリスク: 高額な商品を購入したり、知識がないままリスクの高い投資に手を出したりすると、大切な退職金をあっという間に失うことになりかねません。
- 金融機関からの提案: 退職金の振込口座のある金融機関などから、様々な金融商品の提案を受ける機会が増えるかもしれません。これらの提案全てがご自身の状況に合っているとは限りません。冷静に内容を判断し、必要であれば断る勇気も必要です。
- ご自身の状況の変化: 退職により、収入や支出の状況、生活スタイル、そして「お金に対する考え方」や「どのくらいリスクを取れるか(リスク許容度)」が変化します。この変化を十分に踏まえて、今後の資産について考える時間が必要です。
退職金を受け取った直後の数ヶ月間は、「使い道を考える準備期間」として捉えましょう。この期間に、ご自身のライフプランや、どのようなお金の使い方がしたいのか、あるいは将来に備えてどのように資産を管理していきたいのかをじっくり考えることが、賢い活用のための鍵となります。
賢く『考える時間』を過ごすために
では、この「考える時間」をどのように過ごせば良いのでしょうか。
- 一時的な安全な保管場所:
- すぐに使う予定のない退職金は、まずは安全性の高い場所に置いておきましょう。普通預金や定期預金などが考えられます。大切なのは、いつでも引き出せる安心感と、元本が保証されていることです。
- ただし、超低金利時代においては、預貯金だけでは資産が増えることはほとんどありません。インフレ(物価上昇)が進むと、お金の価値が実質的に目減りするリスクもあります。しかし、「考える時間」の保管場所としては、安全性を最優先にすることが賢明です。
- ご自身のライフプランを整理する:
- 退職後の生活で「やりたいこと」「必要になること」を具体的にリストアップしてみましょう。旅行、趣味、学び直し、住まいのリフォーム、子や孫への支援、医療費、介護費用など、様々な可能性があります。
- これらの実現に必要な資金がどれくらいになるのか、概算でも良いので書き出してみると、退職金の「使い道」のイメージが湧いてきます。
- ご家族と話し合う:
- 退職金は、ご自身だけでなく、ご家族全体の生活に関わる大切な資金です。配偶者やお子様など、ご家族としっかりと話し合い、共通理解を持つことが、後々のトラブルを防ぎ、安心して資産を活用していく上で非常に重要です。
- 信頼できる情報収集と相談:
- 金融機関だけでなく、公的な相談窓口(例えば、お住まいの自治体の消費生活センターなど)や、FP(ファイナンシャルプランナー)などの中立的な専門家に相談することも有効です。ただし、相談先によって得意分野やスタンスが異なるため、複数の視点から情報を得ることがお勧めです。
- インターネット上の情報も参考になりますが、情報の信頼性をよく確認することが大切です。公式サイトや、多くの方が利用している信頼性の高いサイトから情報を得るようにしましょう。
まとめ:焦らず、計画的に、新しい一歩を
退職金を受け取ったことは、これまでの努力が実を結んだ証です。そして、それは同時に、これから始まる新しい人生を計画し、資金を賢く活用していくための大切なスタートラインでもあります。
すぐに大きな決断をする必要はありません。まずは、今回ご紹介したような確認事項や手続きを行い、そしてご自身の今後のライフプランや資産についてじっくりと考える時間を持つことから始めてみましょう。
この記事が、公務員の皆様が退職金を活用し、安心して豊かなセカンドライフを送るための一助となれば幸いです。